STRUCTURE
ハサミの構造
ハサミの各部名称
刃線
刃線がもたらす機能は、カットラインと切れ感であり、とても重要な要素です。
例えばブラントカットに求める切り口はストレートなカットラインであり、ヘアスタイルをつくるうえにおいては様々なカットラインが組み合わされて成り立ちます。それを実現するには、多くのカット技法を習得する必要があるように、シザーもまた同じようにスタイルを構成するためには欠かせない道具と言えます。
髪を逃がさない機能を有するシザーで表現する直線や、柔らかな曲線で表現する時のスライドカット技法でつくるカットラインなど、技術・用途に合わせて選ぶほかに、刃線形状の違いによる各々の切れ感が、刃線選びのポイントになります。
CTN
髪を逃がさない機能 CTN(Catch Triangle Notch)を静刃側に搭載しています。
CTNは、静刃に三角状の切り込みが入っており、この形状よって「逃がさない」を可能にしています。しかし、ただギザギザ状にすれば良いわけではありません。切り込みが深すぎると切れ感が重くなりますし、間隔が広過ぎると髪を捉えることが出来なくなります。
当社では、何度もトライ&エラーを繰り返し、最適な形にたどり着きました。ウェットカット用・ドライカット用の 2 タイプをご用意しております。
※特許取得モデル
800R
直線的な刃線で、刃が髪に対して垂直的に食い込む角度なので、滑りにくい刃線となります。逃げが少ないので、ブラントカット・ベースカットなど、真っ直ぐなカットラインを求める技術に多く使用されます。最もトラディショナルな形であると言え、鋏本来の基本形であることから最初に購入するモデルとしておすすめです。永年の使用で刃が劣化した場合でも引き切り技法で真っ直ぐなカットラインを出すことは可能で、滑らかな切れ感となります。
ウェットカットで使用されることを推奨しております。
プロペラ
800R刃線と比較して、刃の曲線が緩やかで丸みを帯びており、髪が刃先へ押し出される力が働くため、逃がしながら切る技術で表現できる自然な質感を演出します。
また特性として柔らかな切れ味でありながら、引き切りをプラスすることで真っすぐなカットラインを出すことも可能です。
スライドカットなどドライカットでの使用にも適したオールマイティなモデルです。
オーバル
一般的に「笹刃」と呼ばれる刃線です。すべての刃線と比較して、刃先に向かって押し出す力が一番大きく働く刃線です。スライドカットやチョップカットなど、特にドライカットで機能が発揮され、正スタイリストの必須アイテムとして支持を受けています。
また、オーバル刃線には、違う一面もあります。「刃物の特性」としてものを切る際、切り口(断面)を綺麗にする場合は、刃を長く(たくさん)当てる方が合理的で、切られる側(髪)のダメージが少なくて済みます。切断音がない切れ感はとても爽やかで感動的です。このようにオーバル刃線は一つのモデルでありながら全く性格の異なるシザーとしてオーダーが可能なのです。逃げる刃付けから鋭い刃付けまで 3段階で受け付けております。
ハイブリッド
静刃に直線的な刃と、動刃には丸みを帯びた刃を組み合わせることによって、各々の特性を活かした独自バランスのモデルになります。柔らか過ぎず、硬くない切れ感が特徴的で使い勝手もオールマイティなタイプになります。
※Xs・XVシリーズ限定モデル。3段階で受け付けております。
刃形
刃の形状は「蛤(はまぐり)刃」「入山(いりやま)刃」「剣(けん)刃」の3種類があります。
各刃形によって刃の重心が異なります。例えば「蛤刃」では、重心が峰側にあり、「剣刃」では中心に位置します。また、刃角度と体積にも特徴があり、各々の違いによって、髪への食い込み方や切れ感が変わります。さらには、カットワークにおける手触りも違いがございます。見た目のデザインも楽しみたいですね。ご自分のイメージに合わせてお選びください。
※刃形が限定されるモデルがございます。
蛤刃(はまぐりば)
「蛤刃」は重心が峯側にあるため、刃角度が鋭くなります。髪への食い込みが良く、柔らかく滑らかな切れ感となります。最もポピュラーな形で、すべての刃線と相性が良いのが特徴です。
剣刃(けんば)
「剣刃」は重心が刃の中央に位置するため、蛤刃に比べ刃角度が高くなります。厚みのある刃で、しっかりした切れ感です。重心が刃の中央に位置することから、刃幅の細いタイプではおすすめできません。刃幅の広いシリーズや 6.0インチ以上のサイズを推奨しています。
入山刃(いりやまば)
「入山刃」は重心が蛤刃と剣刃の中間に位置し、刃角度や使い道、デザイン的にも蛤刃と剣刃を足して2で割ったような形になります。オールマイティなイメージでバランスのよい形です。
インチ
「インチ」とは、ハサミのサイズを現わす単位で1インチ=2.54cmになります。インチは、ネジ中心から刃の先端を結ぶ直線距離×2(静刃・動刃)から算出されています。
ハサミ選びの一例としては、細かな技術では「4.5、5.0」インチが多く、ブラントカットやベースカットでは「5.5、6.0」インチ、ドライカット用では「5.5」インチ、メンズカット・刈り上げ用では「6.5、7.0」インチが多く選ばれています。
技術にあった操作性、手の大きさ、カットイメージにあったインチをお選びください。
ヘッド形状
セニングシザー櫛刃の先端部をセニングヘッドと呼び、その様々な形をヘッド形状とし、メーカーを問わず多くの形があります。
当社ではフロールヘッド、アルバヘッド、V溝ヘッドから選ぶことができます。ヘッド形状が多種にわたる理由の一つは、切れ方、スキ方に違いを持たせるためです。
つまり、単純に毛量の調節するためだけではない役割がセニングシザーにはあります。
フロールヘッド(階段状ヘッド)
当社製品に多く採用されているヘッド形状です。ヘッド形状が階段状に設計されており、刃を閉じるに従って、切れ残った髪が下の段に落ちていくように設計されています。
これにより自然な質感で表現できるようなり、切れ感も柔らかく、ダメージを抑えることができました。
アルバヘッド(フラットヘッド)
特徴は、フロールヘッドが階段状だったのに対して、フラット状になったヘッド形状です。
違いは、同じ目数である場合や同じカット率であっても、切れ感や、質感に僅かながら違いがあり、それは優劣ではなく、お客様の好みで選ぶことができることで、選択の幅をもたせております。
V溝ヘッド
V溝の特徴は、ヘッド部分にV字型の切れ込みが入っていることです。切れ方はV溝に入った髪をカットする仕組みで、量的にしっかり削いでいくことができます。モデルとしては古典的な形状で、カット率と切れ方に対する選択の幅は多くありません。
目数とヘッド形状による違い
セニングシザーの櫛刃は、目数とヘッド形状の違いにより様々な質感が演出されます。
ヘッド形状が小さくて目数が細かいセニングシザーは、カットラインをぼかし、なじませる自然な質感を表現することに優れています。ヘッド形状が大きくて目数の粗いタイプは、櫛刃と櫛刃の間隔を開けて切っていくため、束感をつくることに優れています。
リジットロックシステム
このシステムの特徴は、ネジ部に搭載されたベアリングの周りに「マグネット」が配置されていることです。
マグネットは、ハサミが自動的に閉じるように、S極とN極が交互に配列されており、パワーアシスト機能として手にかかる負担を軽減しようとするものです。ユーザー様からは、腱鞘炎の痛みが和らいだという、嬉しい声を頂戴しております。
ネジまわりの構造
当社オリジナル設計により、使い勝手、耐久性、メンテナンス性が向上
ハサミにおいて、ネジまわりはとても大切な部分です。ネジの役割としては、静刃と動刃を留めることが挙げられますが、ネジを締める強さが特に重要です。
理由はネジの圧力が髪を切るパワーに変換されるからで、切れ感と使い心地に大きく影響しています。しかし、ネジを締めすぎると、開閉が重くなりスムーズなカットワークが出来ません。この問題を解決するために、いくつかの工夫が施されています。
代表的なものとしては「ベアリング」を採用していることです。当社は 2 種類のベアリングを搭載しており、それぞれ別々の機能を効率よく発揮させることで、滑らかな開閉を実感できます。そしてもうひとつの特徴は、ネジまわりを円形にしたことです。この基本構造によって、様々な機能を当社独自の技術に発展させることが出来ました。
これらは当社オリジナルの設計によるもので、使い勝手の良さと抜群の耐久性もさることながら、パーツ交換などのメンテナンス性もユーザーにとっては大きな購入ポイントになっております。
ハンドル
ハンドルは、まず持った瞬間のフィット感が大切になります。
ハンドル形状の違いによって、ハサミの安定感と可動範囲に影響があるため、慎重に選びますが、すべての要求に対応する形はありません。技術者の相性と使いこなしで馴染んでいきます。
ハンドルの形状
オフセットキャメル
人差し指と中指をのせる部分に角度があり、この形状によってハサミのブレを抑えることと、安定させて可動させる効果があります。
オフセット
人差し指と中指をのせる部分がストレート状のハンドルです。
メガネ
薬指穴、親指穴が同じ位置に揃っているハンドルです。メガネハンドルにもキャメルと呼ばれる角度の付いたメガネキャメルもあります。
ハンドルの角度
ハンドル角度 Y
ハンドル角度 N
ハンドル角度 Z
ハンドルシミュレーション
鋼材
日本には刀剣文化があり、刃物鋼材については古来より研究されてきました。それは今日においてもたゆむことがありません。その意味において国産の刃物鋼は世界のあこがれであり、羨望のまなざしを受けております。
当社はその中でも超最高級という評価の鋼材を採用しており、刃付きの鋭さ、切れの持続、しなやかさなど、どれを取っても超えるものがありません。
スーパーゴールド2(SG2)
精鋼技術の進歩によって生まれた鋼材が、スーパーゴールド2です。
粉末材を圧粉、焼結、高い圧力を加えることで精鋼された超高級刃物鋼です。一般的な鋼材に比べ、金属成分の偏析がなく、均一微細な組織となり、爽やかな切れ味が特徴で、耐久性が高いことから永年の使用やお客様の多い方、初めてであってもメインシザーなどにはおすすめの鋼材です。
VG10鋼
厳選された純度の高い原料鉄をベースに、レアメタルをふんだんに用いた鋼材です。
刃物に必要な要素「鋭い切れ(刃つけ)」「切れの持続性」「耐摩耗性」のすべてを高い領域でクリアしています。高級ハサミに使用される鋼材の最も高いランクに位置する刃材です。